« キムチチャーハンを作ってみた。 | メイン | ジャージャー麺を作ってみた。 »

2006年03月03日

『霊山』を読んでみた。

reizan.jpgさてさて、今回紹介するのはこちらの小説『霊山』です。実は2、3年前、ある新聞の書評を見てずーっと読みたいと思っていたのですが、先日ようやく手にする事ができました。当時の書評の内容は、もう覚えてないのですが(爆)、…この読後感は、ちょっとこれまで体験したことのないような不思議な感じです。。。



特に目的もなく旅をしていた“私”が、汽車の中で偶然話題に上った『霊山』を求めて彷徨う話です。
しかし、物語はもう1人の主人公である“おまえ”との話と隔章で進んでいきます。
なんの脈絡もなく進んでいくかのように見える二人のストーリーが、
実は1人の男の姿であることが見えてきたとき、この物語の奥行きはぐっと深まります。

正直、最初は意味がよく分からないなぁ、、、と思ったのですが、
ある時点から突然、主人公の“私”と“おまえ”への感情移入が急激に始まって、
そこからは、まさにもう止まらない~、という勢いで読んでしまいました。
読んでいる自分自身までもが空想と現実の世界をトリップしているような感じ、
こんな小説、本当に初めてです。

人生の機微が少しずつ分かり始めた、この年になってようやく理解できるようになってきたのかなぁ、という感じでしょうか。
主人公や、その他の登場人物たちの言葉が、時折ぐっと胸に刺さる事もあります。
なんというか、口ではうまく表現できないのですが、恐らく読むたびに、違う印象を受ける本ではないかと思います。
自分が色々な経験を積むたびに、この本への思いは変わってくるのではないでしょうか。

著者の高行健氏は中国の生まれです。
1983年、彼の劇作が西洋の退廃的思想を帯びたものとして、上演禁止となってしまいます。
こうして作品発表の自由が失われた彼は、87年に中国を出国、
祖国を捨て政治亡命者となり、97年にフランス国籍を取得しています。
出国後のパリで、この『霊山』をはじめ、いくつかの小説を完成させた彼は、
2000年、中国語で創作する作家としては初のノーベル文学賞を受賞しました。

この小説『霊山』は、文中、様々に人称を変えながらも、こうした経歴を経てきた彼自身のことを語った自叙伝と言ってもよいかもしれません。

Amazonで他の方のレビューも見ることができます。→コチラからどうぞ。
ちなみに上部の本のイメージをクリックしてもAmazonにとんでいきます。


『霊山』
著者:高 行健(ガオ・シンヂエン)
訳者:飯塚 容(いいづかゆとり)
集英社

投稿者 Keikon : 2006年03月03日 11:14

△ページトップに戻る

« キムチチャーハンを作ってみた。 | メイン | ジャージャー麺を作ってみた。 »

コメント

コメントしてください




保存しますか?



Copyright (c) Keikon. All rights reserved.