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2010年10月31日

福岡旅散文

本気で年に1度の投稿ペースになってきたか。。。ま、思いつき、気まま過ぎブログで申し訳ございません。
約10年ぶりに福岡に行ってまいりました。その話。メモみたいなもんです。


**************

窓から下を覗くと、眼下に海の中道が見えた。
その瞬間、10年前の記憶の扉が開かれる。
扉の奥からあふれ出る光は、私を追憶の更に向こうに連れて行くことになる。


空港に降り立って感じた空気感、10年前もこうだったのかな。
そう思いながら空港の外に出ると、いかにも博多を思わせる看板が目に入る。
西鉄バスが何台も走る。そう、これこれ!
私はこみ上げる笑いをこらえる事ができなかった。

夜は学生時代の友人と会う約束があった。
昼過ぎに博多に到着した私は、それまでにホテルのチェックインを済ませ、
かつての思い出の場所を訪ねてみることにした。

長い時間を過ごした大学構内にも、何食わぬ顔で入ってみる。
専門課程を学んだ校舎は何も変わっていなかった。
学生たちがたむろする食堂前や図書館前の風景も、あの頃と同じだ。
しかし、敷地から一歩外へ出れば、街は全く違う様相をしていた。
新たにできた道路が、人や車の動線をすっかり変えてしまったらしい。

それでもかつての細い道を通るバス路線が、かろうじて残っていた。
私はバスに乗って、教養課程を学んだ校舎へと向かう事にした。
その夜の約束は教養時代にお世話になった飲み屋さんで、だったからだ。
二本あったバス路線のうち、一本は途中からのルートが変わっていた。
残った方の路線バスに乗り込む。

当時、私がこのバスに乗る直前に急な雨に降られ、びしょぬれになってしまったとき、
バスの運転手さんが、なんと持っていた傘をくれたことがある。
懐かしい思い出だ。

バスで走ると、街の表情が良く分かる。
10年の間に変わってしまったこと、変わっていないこと、そんな風景を楽しむ。
福岡は九州の基幹都市だ。
バスから人の往来を覗いていると、家路につく人、まだまだ働く人、遊びに向かう人、
様々な顔を見る事ができた。

やがて、昔よく使っていたバス停を降りる。
教養時代を過ごした校舎は、門が閉じられ、ひっそりとたたずんでいた。
大学自体が移転を進めており、こちらは既に使われなくなってしまっているのだ。
日が落ち、ぼんやりと外灯に照らされた校舎は物悲しく、
多くの人たちの記憶の中だけに残るものとなっていくのだろう。
学生時代によく行っていたもつ鍋の名店の一つも消えていた。
街から学生が消えると、そこに刻まれた歴史もまた消えていく。


約束の時間、約束の場所に向かうと、そこには見慣れた顔が並んでいた。
10年の月日は皆に様々な変化を与えている。
それでも、話をすればそこに時の流れは殆ど感じない。
あたかも、あの頃と全く同じかのように、楽しい時が流れていくのだ。

それは、とても不思議な感覚だった。

初めて親元を離れて暮らした場所、一緒に過ごした人たち。
社会人でもない、かといって子どもとも言えない、
未熟だけれども柔軟で、激しく突っ走っていた頃に共に過ごした人たちは、
ある種特別な仲間かもしれない。

しかし、10年という時間は各々の人生に全く別の経験を与え、人はそれを糧に成長する。
あの頃と変わらない自分が、変わらない仲間との時間を楽しんでいるのと同時に、
そこから少し立ち位置の違う別の自分が別の眼鏡をかけて当時をしのんでいた。

学生時代、私は大きな人生の分岐点をいくつも通過していた。
当時はその事の重大さは分かっていなかったし、
分岐点とすら気付かず意思の赴くままに進んだ道。
しかし、10年の経験を積んだ自分がそこを振り返ったとき、
今更ながら、あの選択が違っていれば、ひょっとすると今は…と考えてしまうのだ。

それは、後悔に似た感情だが、少し違う。
あの後、私は多くの人と出会い、多くの事を学んだから。
そして今の自分のスタイルが嫌いではないし、仕事にもやりがいを感じているから。


でも、、、


10年経って振り返って初めて分かる、あの時、自分で手を離してしまったものの大きさ。
戻る事もできず、新たに掴みに行く事もできないものが確実にある。
全く違う方向に向いて歩いて行くしかない事を、頭では嫌と言うほど理解できるけれど、
それでもなお、この傍観席から立ち上がる事が出来ずに涙する自分がいる。

…これは、やはり後悔なのかな。
だとしたら、私はこの後悔をいつか笑って「いい経験だった」と言えるように
成長するしかないのだろうな。

少し、時間がかかりそうだ。


二日目の晩も、三日目の晩も、また別の懐かしい面々と会う事が出来た。
随分長い間音沙汰もなかったのに、こうしてまた再会出来るというのは、
とても幸せな事だと思う。
忙しい中、わざわざ時間を取ってくれたり、遠方からも足を運んでくれた友人たち。
私にはこんなに素敵な仲間がいた事すら、扉の向こうの記憶にしてしまっていたかもしれない。


みんな、本当にありがとう。


殆ど思いつきというか、勢いのような感じで決まった今回の福岡訪問。
しかし、実はここ数カ月、当時の仲間からの連絡がちょくちょくあったのだ。
何か、あの場所に呼ばれているのかもしれないという予感があった。
そして今、学生時代を過ごした街は、私を常にTurning pointへ導く場所かもしれないと感じる。
本当に来て良かった。

必ずまた来る。
多分、必要な時にまた街が呼んでくれる気がする。
その時は、懲りずにまたみんなと馬鹿な話が出来ればいいな。
皆さま、今後ともよろしくお願いしまーす。


福岡で新たな思い出ができた。
左手に掴む傘は、古い思い出も新しい思い出もよみがえらせてくれるものとなった。
雨の日は、ますます楽しく、多少ほろ苦い日になりそうだ。

投稿者 Keikon : 2010年10月31日 00:40

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